ひとさじのときめき

BOOKS,ZINE/写真/つぶやきミックス

探し求めていた写真集「SHADOWS」

その時にちょっと気になっていたのだけど、買わずに迷っていたらもう買うことが出来なくなってしまったものってありませんか。

私はある写真集がそうでした。
それは中野正貴氏の「SHADOWS」です。

中野正貴氏は1980年からフリーランスのフォトグラファーとして雑誌表紙や各種広告撮影を手掛けられてきた方で、代表作には誰もいない東京を映し出した 
「TOKYO NOBODY」という写真集もあります。

 

もうどれくらい経ったか。当時、渋谷PARCOの地下にパルコブックセンターという書店がありました。(今はもうなくなってしまいましたが)

そこでその写真集の企画展みたいなのをやっていたのですよ。
どこかの都会の裏側。ジトっとして薄暗くて、でもネオンがきらびやかでそこに住む人たちの生活が映し出されていて。妖しくもどことなく切なくなるような、そんな気持ちになった写真。

行くたびになんども通ってみたけど、結局買わずにいたのです。
でも時々ふと思い出すことがあって、「ああやっぱりまた見たい」と、探してみたのだけど写真家の名前が思い出せずに探し出すことが出来ないでいました。
写真の残像だけが記憶に残っていただけで・・・

そうして、昨日またふっとそのことを思い出したのです。
渋谷に用があった帰りに神保町へいき、なにげなく入ったアート系を扱う古書店で、それはもう偶然に再会してしまいました。
日本人の写真家の棚、一番端っこでひっそりと
お探し物はここですよ
とでも言われたように。

私もアッと声を出しそうになりました。
まさかと思いながら手を伸ばしてページを繰ると…やっぱりそうだ!あのときの写真集だ…

初版が2002年8月との記載があり、というとあれからもう20年!?
私は20年も時々思い出していたということか。

当時の定価は本体で3000円でしたが、この書店では6600円になっていました。
値段は倍以上になってしまったがこれはもう買うしかない。

そうして棚の下に目をやると、そこには植田正治氏の写真集が。
先月FUJIFILM SQUAREで植田正治氏の「ベス単写真帖 白い風」企画写真展が開催されていたのですが、それを観に行って氏独自の撮影手法による、淡くぼんやりとして優しい空気がただよう写真に魅せられていた矢先。

この「白い風」を含む砂丘シリーズなど、氏の世界観がまとめられた写真集まで見つけてしまったのです。

これはもう…うちでじっくり見なくっちゃ!!

ということで2冊を購入してしまいました。
出会いと出費はある日突然に。いや、もう早く言って。多めに持ってきてよかったけど。

 

写真集「SHADOWS」は、どこの都市のものだったかよくみてみると、香港の街を映し出したものでした。まだ九龍が取り壊されていないときの、混沌として、カオスな香港。近年では自由が失われていき当時の空気感はなくなっているのかと想像すると、切ない気持ちにもなります。

20年ぶりの再会の喜び。
音楽もそうですが、写真もまたあのときの記憶を呼び覚ましてくれます。

今夜もまたページをめくりながら、当時の混沌とした香港を旅しようと思います。

 

今日のときめきBGM
Forever / Snakehips