ひとさじのときめき

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都内写真展を三か所巡る休日

先日かなり久しぶりに自由な時間がとれたので、気になっていた写真展を観に行ってきました!!やったね!

訪れた展覧会がこちらです↓

  • 「祈り・藤原新也」 藤原新也
  • 「不思議な力」 野口里佳
  • 「悠久の時を旅する」 星野道夫

以上の三か所です。今回は、展覧会を観た私の感想を備忘録として書いていきたいと思います。

まず訪れたのが世田谷美術館で開催されている「祈り・藤原新也」展です。

写真家であり、作家・画家・書道家でもある藤原氏。
名前だけは知っていましたが、作品自体はしっかりと拝見したことはありませんでした。今回展覧会情報の中で、ひとつの写真が目に留まりとても興味を覚えたのです。

それはひとりの僧がオレンジ色のマリーゴールドの花束を携えている一枚。

どんな「祈り」があるのだろうと思いました。そして藤原氏の写真家以外の活動にも興味をもち、この展覧会を訪れてみたくなりました。

まず私たちを迎えてくれたのは、大きく引き伸ばされた蓮の花。

神秘的で、いまにも花びらがふんわりと動きそうな、幻想的な蓮を写し出していました。仏教での「祈り」を柔らかに感じ取ることができます。

そして日本とは全く異なる、インドの弔い。
インドへ行くと人生観が変わる、というのはよく聞く話ですが、こうした死生観もそうなのだろうかと思います。

また随所に書の大作も展示されていました。氏の魂の叫びのような、勢いがあり力強い筆さばきに圧倒されます。そんな圧倒的な書があったかと思うと、氏の描く画というものはとても繊細でこまやかで優しい雰囲気も。かといってほんわかしているわけではなくて、こちらにも何かメッセージを秘めているような、そんな印象を受けました。

世界を巡りながら、人間の生と死、たくさんの人々の生活と交流の中でみえる、そのひとの奥にあるものまでも捉えたように見える写真たちが多く展示されていました。
また、そんななかでも東北の大震災は、死生観さえも揺さぶられた大きな出来事です。なにを想うのか。

写真は撮って記録するだけじゃない。写真家の心までも写し出してしまうものなのかも知れない。

「何か」を伝える手段をたくさん持ち合わせていて、写真だけに留まらない多才な藤原新也氏の作品を観ながら、そう感じた展覧会でした。

藤原新也 「祈り・藤原新也」展 チラシと図録

世田谷美術館を後にして、ひと息つきに渋谷へ。
私は渋谷のヒカリエ8階にあるD&DEPERTMENTというお店が好きでよく立ち寄ります。ロングライフデザインをテーマとするストアスタイルの活動体なんだそうです。日本各地の土地のいいもの、産業、そしていいデザインはこんなにもたくさんあるのかと思います。長く愛せるような、まだ知らないよきものに出逢えるお店です。

でも行った日は定休日でした。残念・・・。
お店の後にしながら開催されている美術展のポスターたちを眺めていたところ、またも一枚の展覧会に目が留まりました。

野口里佳氏の「不思議な力」展です。

恵比寿にある東京都写真美術館で開催されているとのことでした。以前から観たかった星野道夫氏の「悠久の時を旅する」展も同じ美術館、今行けば2つも観られるじゃありませんか!!
と、いうことでお昼も食べずに恵比寿へGO!となったのです。

東京都写真美術館、久しぶりだなあ。

二つの展覧会のセット券というものが発売されていて、一般だと1530円でした。

まずは野口里佳氏の「不思議な力」展へ。

野口氏は現在は那覇市に在住されている写真家で、1992年より写真作品の制作をはじめられたそうです。現代美術の国際展にも多く参加しており、作品は国内外の美術館に収蔵されているとのこと。

不思議な力、そのタイトルのように「なぜそうなるのか」と日常にある「?」をやわらかに収めたような作品、美しい光の加減とともにこどもの時の気持ちがよみがえるようです。

なかでも印象深いのは海底にみる光の写真でした。
暗い海底から見るぼんやりした光。まるで宇宙空間にでもいるような、不思議な一枚。
私がこの一枚に惹かれて訪れてみたくなったのは、まさに「不思議な力」なのかも!?

そして野口氏の家族写真も展示されていました。野口氏のお父様が撮った写真たち、やはりセンスを感じます。家族写真のアルバムってめっきり開くことはなくなってしまったけど、たまには開いてみるのも良いかもしれない。

野口里佳 「不思議な力」展 チラシ&作品リスト

 

続いて、星野道夫氏「悠久の時を旅する」展です。

会場入り口にて。

展覧会を知ったのは新聞の広告欄だったのですが、この白熊の写真に惹かれたのでした。この白熊はなにを思っているのだろうか?そしてこの瞬間を収めた星野道夫氏という写真家のことも知りたいなと思ったのです。

星野道夫氏は1952年生まれ、大学生の時にアラスカについて書かれた洋書の写真にひかれ、エスキモーの村の村長に手紙を書いたそうです。(すごい!)
20歳の夏休みにアラスカに3ケ月滞在し、大学卒業後は写真家の助手を2年務めた後、アラスカの大学(野生動物管理学部)に入学。以後はアラスカの自然や人々をテーマに写真を撮り続けていたとのこと。しかしながら1996年の8月の取材中にヒグマに襲われ、亡くなられてしまいました。

とくに2022年はご存命であれば70歳であったということで、氏のそれまでの作品をたどりながら思いを馳せる展覧会となっています。

地球上の、極寒の地でもたくましく生きる動物たち・そこに住む人々の暮らしで始まる作品は、なんとも壮大で圧巻です。
とくに野生の動物を対象としているときは、シャッターボタンを押す瞬間というものはかなり貴重なのだろうなあと思います。
しかも極寒の地でのテント暮らし、ほんとうに強い意志、惹かれるものがないと貫き通せないことなのではないでしょうか。

また、途中に確か3機、星野氏が愛用していたカメラも展示されていました。
「こういうカメラを使って、厳しい環境のなかで生命の営み、人々の暮らしを撮り続けていたのか」と感慨にひたることもできました。

道半ばでその旅を終えることになってしまった星野道夫氏。
大自然にたくましく生きる動物たちとそこに住む人びとの暮らしを写し出した写真たちは、現在も私たちに語り掛けてくれます。

そしてもしも生きて写真を撮り続けていたなら、この現代の地球環境をどう思われていたでしょうか?氷河は解けてなくなり続け、白熊たちは行き場をなくしつつあります。
なんだかそんなことまで考えてしまいました。

また星野氏はエッセイも残されていて、写真とともにいくつもの書籍があります。
より深く知るみちしるべになりそうです。

星野道夫 「悠久の時を旅する」展 チラシ

それぞれの写真家の個性が際立っていて、メッセージ性も異なりますが、どれもこころに強くのこる展覧会でした。

私の仕事の疲労感とは、なんとちっぽけなものなんだろうか。

今回はそう思うくらいの圧巻的スケールで包まれてきた一日でした。
写真家のエネルギーを存分に感じられる展覧会なので、ご興味のある方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
日々の疲れやお悩みなどすっ飛ぶこと間違いナシ!

 

 

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